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JAAR

Japan Association of Action Research

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SSM (Soft Systems Methodolgy) とは、英国ランカスター大学のピーター・チェックランド教授とそのグループにより、四半期にわたり開発されたマネジメントの方法論。従来のシステム方法論が科学的実証主義をベースに実在する”モノ”中心のシステムを主張したのに対し、SSMでは研究者が問題状況に関与するアクションリサーチベースの参加型で行為指向の”プロセス”中心のシステム論を展開し、より人間的で複雑な問題状況を取り扱おうとしている。その意味で、SSMは広義のアクションリサーチの1つの方法論と考えられる。アクションリサーチは日本では「行為研究」と訳されているが、研究者自身がある役割を担って問題状況に行為的にかかわって、問題状況から行為的学習を獲得してゆくと同時に状況それ自身も変えて行こうとするものである。
 科学的実証主義が「いつでも、どこでも、だれがやっても同じ結果が出る」ような、客観的で普遍的な、反復可能性 (repeatability) を持った形式知を求めるのに対し、SSMベースのアクションリサーチでは、人間の事象においては原理的に反復可能性はあり得ず、したがって科学的実証主義の基準である客観性や普遍性をいったん破棄する。そのうえで、科学的実証主義が無視してきた主観性や人間の個別の経験、価値観、身体性を、もう一度学問の俎上に乗せるために、公共的議論の場で研究プロセスが公開できるような回復可能性 (recoverability) という基準を科学の反復可能性 (repeatability) の代わりに取り上げる。SSMベースのアクションリサーチが求めるのは、経験をベースにした実践の知 (臨床の知、現場の知) のような暗黙知である。
 その時SSMにおける「思いのモデル」は、この回復可能性を維持するための重要な道具となっている。このことにって、SSMは多くのアクションリサーチのなかでも優れてい知的機密性を確保する方法論として評価できる。
 SSMベースのアクションリサーチは、教育分野や看護分野、組織論や情報システム論を始めとして、いままで科学的実証主義の限界を感じてきた多くの研究者や実務家によって、研究の方法論や実践のガイドラインとして応用されてきている。
 またSSMは、日本的経営を分析する方法論としても優れた面をもっており、今後日本におけるより広い文脈での発展が期待されてきている。